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固定を待って、病理学者の協力をえて、検査に必要な標本が切り出され、標本が作られ、顕微鏡で、がんの性質、浸潤の様子、転移の状態が調べられる。
その結果によって、術後の化学療法、免疫療法が追加されることもある。
このように、多くの人たちが一人の患者を救うために努力していることを理解してほしい。
大腸がんに対する外科手術も、麻酔や輸血・輸液の進歩、抗菌剤の発展などに助けられながら、がん手術の基本である、がんを根絶やしにすることと、機能をできるだけ正常に近く保つことの二つを重点に、術式の改良が重ねられてきた。
大腸がんに対する外科手術の特徴は、大腸がんを根絶やしにすることを目指した拡大手術と、機能温存することを目指した縮小手術ががんの部位と進行度により使い分けられていることである。
最近、胃がんと同じように、早期大腸がんを内視鏡でみながら切り取る治療法が行われるようになってきた。
この治療法の行える大腸がんは、がんが粘膜内にとどまっており、リンパ節への転移がないもので、隆起型早期大腸がんでは長径ニセンチメートル以内、あるいは早期大腸がんでは長径一センチメートル以内のものと一応されている。
胃がんと同じように二、三の方法がある。
その一つは、ポリープ状のがんの場合、ファイバースコープでみながら、茎の部分にスネアというワイヤーをかけて、これを締めつけて、高周波電流を流して、焼いて切断、ポリープを回収するものである。
胃のポリープと同じように痛みを感じることはない。
その二は、ストリップバイオプシーといわれるもので、ポリープを切り取る方法を応用したものである。
がん病巣の周囲粘膜下層に注射針を刺し、五~一〇ミリリットルの生理食塩水を注入、がん病巣を大腸内腔に突出したように隆起させた後、つまみあげて、スネアをかけて締めつけ、高周波電流を通じて切断する。
この方法の長所、短所は胃の場合と同じである。
そのほか、がん病巣にND・YAGレーザーやアルゴンレーザーによるレーザー光線を照射し、がん病巣を焼ききる方法もある。
外科的治療 手術そのものは胃がんの場合と変らないので、大腸がんに特徴的な点だけを記すことにする。
・結腸がん手術。
結腸は解剖学的には比較的単純な臓器であり、またかなり広い範囲切り取っても強い障害が現われないことから、一括して広い範囲を切り取ることが可能である。
したがって、結腸がんに対する外科的治療はきわめて有効で、その手術後五年生存率もよい。
結腸切除術は、がんのある結腸の部分へ行っている動脈の根部を要にして、がんのあるところを中心に、がんの境界から口側五センチメートル、肛門側五センチメートル離れた結腸に向かって、扇形に結間膜を切り、さらに結腸を切り取る。
そして、腸と腸を吻合する。
たとえば、S状結腸がんであれば、下腸間膜動脈根リンパ節を取り除いた後、左結腸動脈とS状結腸動脈の分かれるところで、S状結腸動脈を切る。
そこから、結腸を切り取る部位に向かって、間膜を扇形に切り離す。
S状結腸が取り除かれたならば、残っている結腸と結腸を吻合する。
こうすれば、関係のあるリンパ節とがんのある結腸とを一括して取り除くことができるというわけである。
・直腸がん手術。
現在行われている直腸がんに対する手術は、一九〇八年、M氏によって、一度に腹部と会陰部とから直腸を切り取る手術が行われたことにはじまる。
その後、この手術の根治性の高いことが認められ、手術の安全性が高まるとともに、次第に普及してきた。
とくに一九四〇年には手術死亡率はわずか一・九パーセント、手術後五年生存率は五二・八パーセントに達した。
直腸がん手術成績は飛躍的に向上したことになる。
これを契機にわが国では、この術式が標準術式として広く行われることになった。
・人工肛門。
最近、手術法の改良によって少なくなったとはいえ、肛門に近く進行直腸がんがあるときは、腹を開いて、肛門を含めて直腸全部を広く取り除く手術が行われる。
同時に、大便の排出口として、臍の近くの左下腹部につくられるのが人工肛門である。
これは腹壁に穴をあけ、大腸をひき出し、そこから大便をからだの外に排出するものである。
人工肛門は肛門のまわりを輪状に囲んでいる括約筋がないので、大便やガスが患者本人の意志とは関係なく排出されたり、周囲の皮膚がただれるため、とくに作られた袋やベルトなどをつけなければならない。
人工肛門関連用品も開発され、日常生活は支障なく送れるようになったとはいうものの、定期的に排便するように、自分で人工肛門から毎朝あるいは毎夜一回洗腸して腸の内容物を洗い流さなければならない。
さらに、食べ物にある程度の制限がある。
たとえば、油物、発酵しやすい豆類、さつまいも、なまの野菜牛果物、牛乳をひかえるなど、日常生活の質、いわゆるクオリティオブライフのうえで多くの問題がある。
・機能温存手術。
直腸を切り取る手術の治療成績の向上によって、手術後長期生存する例が増加してくると、思わぬ問題が生じてきた。
人工肛門によって社会生活が妨げられ、生命は助かったものの、充実した人生を送ることができないことへの反省がなされるようになった。
そして、病理学的調査が進むにつれて直腸がんの進みかたもわかり、排便機能温存手術が行われるようになる。
この手術の対象となるのは、がんの下縁が肛門縁より六センチメートル以上離れてある直腸がんで、術後機能を考えて前方から切り取る手術が第一選択とされ、排便機能温存が不可能な場合にのみ腹部と会陰部から一度に直腸を全部切り取る手術が用いられるようになった。
一九六二年になると、それまで直腸を全部切り取る手術一辺倒であった直腸がん手術に、積極的に排便機能を温存する手術が取り入れられ、直腸がん手術の半数近くに排便機能が温存されることになった。
手術後の生存率は低下せず、排便機能も良好となった。
今日では、直腸がんに対しては、器械吻合を用いた低位前方切除術といわれる術式が広く用いられ、また、この術式ができないほど直腸の低い位置にがんがある場合、貫通、あるいは重積手術といわれるような手術聖経肛門的に腸管吻合術などが行われる。
・リンパ節を取り除く範囲。
大腸がんに対する手術で取り除くべきリンパ節聖腸を切り取る範囲について、明確な規準が定められたのは一九七七年、「大腸癌取扱い規約」が作成されてからである。
がんのある部位にしたがって、所属リンパ節は第一群から第三群に分けられそれぞれのリンパ節に重みがつけられ、取り除くべきリンパ節が明らかにされた。
ここで、胃がんに対する手術で成功を収めたように、大腸がんでも所属リンパ節を広い範囲にわたって取り除くことになる。
結腸、直腸がんの再発例を調べてみると、直腸がんの再発は五六パーセントが局所再発であるとの報告や、内腸骨動脈領域から鼠径部までを含めた広範にリンパ節を取り除く手術が必要であるとの研究が発表され、骨盤内のリンパ節を広範に取り除かなければならないとされるにいたった。
このようにして、わが国では下部直腸がんに対しては骨盤内のリンパ節を徹底的に取り除く手術が広く行われることになった。
しかし、予想外に重篤な膀胱機能障害や性機能障害のおこることが明らかとなり、転移の可能性の少ないがんには行うべきではないと考えられるようになった。
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